ようやく、落ち着いて「はたおり」が出来る日々がやってまいりました。
　今年前半は、ロラスの儀式のことでいっぱいでしたが、大切なその儀式も終わり、ガルンガン、クニンガンも無事に済み、腰を落ち着けてはたおりをする時間が作れるようになってきました。
　とはいえ、明日はご近所で火葬式もあり、今年はどういうわけか雨が続いていて、では機織に集中しましょうか、というわけにもいかないのですが、とにかく、機織の音が、ご近所でも少しずつ聞こえ始めてきました。良かった。。

　ありがたいことに、「来年、またバリ島に来た時に引き取りますので、良いものを作ってね」という、心優しいオーダーを数点頂き、また、試作、見本作りも進めなくてはなりませんし、流行の配色のものも準備しなくてはならないし、道具作りも頼まなくちゃ、、、と、ここに来て「ソンケット織り」の周辺が賑やかになってまいりました。
　
　１０年前、はじめてこの場所、シドゥメン村タボラ地区、にやってきた時は、あちらこちらから、それも夜が明ける前から、夜遅くまで、機織をする音が聞こえている、というのがこの村の特徴でした。それがいつの間にか、私の家の周りでは、数台を残して、機織をする音が聞こえなくなりました。
　材料となる糸の値段は上がり続けているのに、出来上がった布の買値が上がらない。若い人たちは、機織をするより、実入りのいい職業を選べるようになった。子供たちに機織を教えない、教える機会がない。何でこんなめんどくさいことを続けなくちゃならないのか、わからない。

　大型の機織産業が続いているシドゥメン村市場の周辺では、数件の大きな元締めとお抱え職人というかたちで、ソンケット織りが残っていくのでしょうが、ここタボラ地区のような、半農半職スタイルでやってきた場所で、時代の波に逆らうのは、とんでもないことなのかも知れません。
　
　「ここの村ではソンケット織りが出来るんだよ、ずっと続けてきたんだよ」という言葉と、それはそれはめんどくさい行程の上に出来上がった、派手な布を見て「私もやってみようか」と気軽にはじめてしまった機織なのですが、ずっとずっと先のいつかの時代にも、同じような言葉を聞いて、同じような布を見ることが出来ればいいな、と思ったりしています。

　とりあえず、出来ることから、ということで、瞑想体験でもお世話になっている、プトゥさんの奥さん、クトッゥトさんに、機織を手伝っていただきます。

　もうすぐ中学生になる娘さんは、いつもお母さんの機織の様子を見ていて、だいたいわかっているけど、自分で織ったことはない、のだそうで、勉強と両立しながら機織も出来るようにしたい、と言っていました。そうです！それでこそタボラの娘なのだ！孫や曾孫にもソンケットを見せられるように、一緒に織っていきましょう！

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