いつも、というわけではありませんが、我が家の台所には、大抵バナナがぶら下げてあります。ナミちゃんが学校へ行く前に、ちょっと小腹が空いたときに、気が向いたときに、と、いつでもどこでも食べられるバナナは、大変便利です。
　それらのバナナは、お供えもののお下がりであったり、アビアン（Abian　里庭）に実ったバナナであったり、市場で買ってきたものであったり、様々です。

　ご存知のように、バリ島では、様々な種類のバナナが手に入ります。今朝、主人が市場で買ってくれたのは、このバナナ。

　ビウ・ダン・サボー（Biu Dang Sabe）です。ビウはバリ語でバナナのことです。サボーの発音は、実際には、バとブとボの間のような音です。表記では、「サブ」ですが、話している音では、ボの方にアクセントを置いて、やや「サボー」と長く聞こえます。西茨城郡出身の私にとっては、後ろ上がりのあいまい音の言葉は、ちょっと懐かしい響きです。
　話がそれました。
　
　バリ島では、儀式やお祭りにの際、お供えもののバナナは欠かすことが出来ないものですが、このビウ・ダン・サボーは、デワ・ヤドニャ（Dewa Yadnya　神様のための儀式）には使ってはいけない、とされています。例えば、お寺のオダランの供物には、このバナナは使いません。

　「Mitos-Mitos Tanaman Upakara（供物にされる花や木の神話）」という本に、その謂れが簡単に書いてありました。それによると、

　「シワ・タットワ（Siwa Tattwa）」に書かれたものによると、デウィ・ドゥルガ（Dewi Durga　魔女、シワ神の妻ともされる）は、パンダワ（Pandawa　マハーバーラタに登場するパンダワ5兄弟）が行うヤドニャ（Yadnya　儀式）を、ラクササ（Raksasa　魔人）を使って邪魔をした。
　サハデハ（Sahadewa　パンダワ5兄弟のひとりで、天国では医療治療の専門家とされる）は、シワ神の神力を受けて、デウィ・ドゥルガを殺した。そして、殺されたデウィ・ドゥルガの乳からは、ビウ・ダン・サボーの木が生え、実がなった。
　そのため、ビウ・ダン・サボーは、神への捧げものとしては使わないが、マヌシャ・ヤドニャ（Manusa Yadya）やピトラ・ヤドニャ（Pitra Yadnya）には使われている。　
　
と、いうことでした。日本の古事記や、世界の神話にも、似たような、死んだ体から植物の種などが生まれたり、木が生えたりというお話がありますね。
　ちなみに、マヌシャは人間、ヤドニャは儀式という意味で、ポトンギギや結婚、子供や赤ちゃんのための儀式など、人間のために行なう儀式ことです。ピトラ・ヤドニャは、火葬式やロラス、プムクランといった、人間が死んだ後の魂のための儀式です。
　もう一つちなみに、今の時期、7月から8月にかけて、バリ島のカレンダーでサシ・カロ（Sasih Karo）の月は、このピトラ・ヤドニャが多い月でもあり、バリ島のあちらこちらで、火葬式を頻繁に見かけることが出来ます。

　デウィ・ドゥルガの乳から生えたというバナナは、甘くもっちりした食べ応えで、そのまま食べるだけでなく、調理用として、パンケーキの具やピサン・ゴレンにも良く使われます。火が通っても、果肉が崩れにくく、ほんのりした酸味と甘さが特徴の美味しいバナナです。

バナナいろいろ
さらさらと輝く髪の毛
種のあるバナナ
お隣さんから大きなバナナを買いました。
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