今年は、ブサキ寺院にて１０年に一度のバタラ・ウルン・カベーという大祭が行なわれます。お祭りの日は、来月４月９日木曜日の満月の日、ちょうどインドネシアの地方議員の選挙が行なわれる日にあたっています。
　そのお祭りに先たって、昨日、ブサキ寺院の神様たちは、お清めのために、クルンクンの海岸にあるバトゥ・クロトッ寺院を出発しました。そこで一夜を過ごした後、今日になってクルンクンから北上し、シドゥメン村内を通りながら、トジワ寺院へ立ち寄り、その後タボラ地区のプラ・プサを訪れ、そこでまた一泊して、翌日ブサキ寺院へ戻る、という祭事が伝統にのっとり行なわれています。ブサキ寺院から降りてくるご神体は、ブサキ寺院の中心であるプナタラン・アグンの神様、イダ・ラトゥ・リンシールをはじめ２５体以上、それに同行するためにバリ中から集まった数千人の人々の行列が見られる、と聞いてわくわくする私。

　朝、シドゥメン村の市場へ行って、お供え物用に果物や花などを買ってきました。今日はどういうわけか、あたりの空気がしーんとしています。市場のあたりでも、いつも漂っているにぎやかな雰囲気がありません。人々は、大きな祭事のために、いつも以上に忙しくしているのですが。なにやら不思議な雰囲気が漂っています。

　お供え物の準備も終えて、行列が村の近くまでやってくるのを待っています。ご神体に同行することを、ンギリンといいます。バリ語で、ついて行く、とか、一緒に行くといった意味があり、神様のため、お祭りのために働くという大切な仕事でもあります。ブサキ寺院を出発してから、ブサキに戻るまで、ずっと同行する人もいるそうですが、自分の出来る範囲で同行しても大丈夫です。なにしろ、全行程が徒歩ですから、自分の健康状態やその他の事情も考えなくてはいけません。ニョマンさんは、もっと若いころ、ブサキの祭事でンギリンしたことがあるそうで、今回もできたらクルンクンのクロトッ寺院あたりからタボラのプラ・プサまでンギリンしたい、と言っていました。が、田んぼの仕事や祭事続きで疲れが出てしまったのでしょうか、持病の痔が再発してしまったのです。ああ、無情。本人は、ンギリンしたかったようですが、無理ですね。

　行列の中の太鼓やバレガンジュールの音が近くなってきたようです。私たちが通りに出てみると、ご近所の方々、すでに通りに座って行列をまっていました。

　これは、マトゥラン・ヤサと呼ばれるンギリンする人達への差し入れです。通りに沿って、こういった飲料水やジュース、果物などが用意されたテーブルが、いくつも並べられています。

　空も晴れ渡って、まだ熱さの残る午後３時ごろ、にぎやかな音とともに何か近づいてきました。

　はじめに現れたのは、ご神体が通る道を確認する係りの人達です。道沿いの洗濯物などをしまうように、汚いものや穢れたものを片付けるように、立っている人は座るように、ご神体が通る道より高い場所に座らないように、など、車からのスピーカーで注意を呼びかけるとともに、係りの人達が近くにいる人々に、注意深く指示していきます。我が家も含め、ご近所の人々も、ガルンガンの前からいつもより念入りに通りを掃除していましたが、ご神体が通る前の最終チェックです。

　私たちが座っていたワルンの前に出されていた、ガソリンの入ったボトルも、すぐに奥にしまうように注意されました。イダ・ラトゥ・リンシールが、通りで穢れたものに出会ってしまうと、ご神体が急に重くなったり、揺れ動いたりして、先に進まなくなってしまうのだそうです。

　聖水散布車。通りがきれいになったところで、ブサキ寺院から運ばれたティルタ・ムルカットを、車に乗っているプマンクーが、通りや控えている人々にふりかけて清めます。

「バリ島のお祭り　タボラにて」は、その５まで続きます。お楽しみに。