私の瞑想の先生、シドゥメン村タボラ地区にお住まいの、マンクー・マストゥラ氏のお宅で、来週5月20日の水曜日、ロラス（Ngroras)という儀式が行なわれます。バリ島で行なわれる宗教的な儀式の中では、盛大な火葬式が有名ですが、火葬式によって自然界に放たれた魂を、今度は天界にお送りし、ブタラ・ヤンと呼ばれる子孫を守護する祖先の霊となって、家のお寺にお迎えする、という一連の儀式がロラスというもので、約2週間にわたり、火葬式よりも、より一層盛大に行なわれます。
　同じバンジャール（地区会のようなもの）に住んでいる私たちは、こういった場合も、ゴトンロヨン（相互扶助）のご招待を受けます。バンジャール・タボラの家族、親類の女性たちが集まって、ゴトンロヨンに出かけました。総勢30名。
　午前中は、昨日でオダランが終了したプラ・ダディヨのお片づけがあったので、ゴトンロヨンへはお昼過ぎに出かけます。私は、お寺のお片づけに参加しませんでしたが、両方出席する女性は、眼のまわるような忙しさです。
　ゴトンロヨンに出かけるときは、儀式にあわせて、カド（贈り物）を用意していきます。供物としても使われるお米やバナナ、来客に備えてのコーヒーや砂糖の他、葬に関する儀式の時は、お香やカサと呼ばれる白い布を準備します。それらを入れた盆を頭に乗せて、何となく行列になって歩くこと5分弱、タボラのバンジャール（地区集会場）の目の前にある、マストゥラ氏のお宅に到着しました。

　到着すると、とりあえず贈り物をその辺において、何をお手伝いしたらよいか、ご家族の方に聞いてみます。家族の方は、「まあまあ、お煙草でもどうぞ」といって、すぐにはお手伝いをさせてくれません。やってきた人々にいきなり仕事をしてもらうのは、良くないようです。

　頃合をみて、今日のゴトンロヨンのジャイタン（椰子の葉などでお供え物を作ること）作りに加わりますが、参加人数が多いと、道具や材料がまわってきません。何もしていないと、怠けているように見えるので、「こっちに材料まわしてくださ～い」「包丁かして～」という声が、飛び交い始めます。

　家族の方々が気がついて、別の作業場所を用意してくれたので、私はこっちのグループに参加しました。ルクサンというものを作ります。ワイルドペパーに似た葉っぱに、水で溶いた石灰を塗りつけて、クルクルと煙草のように巻いて、糸で縛ります。150個作らなくてはなりませんが、人手がたくさんあるので時間はかかりません。手先の器用なバリ人女性、おしゃべりに熱中しても、きちんと手は動いています。ちなみに今日盛り上がったおしゃべりの議題は、どういうわけか「避妊」について。

　仕事がひと段落着いたころ、一休みのためにコーヒーが運ばれてきます。椰子砂糖のきいた甘いお菓子と、甘いコーヒーが振舞われます。休憩の後、しばらく同じようなお手伝いの仕事をしてから、お暇いたします。

　こちらの建物では、ゴトンロヨンで作られたお供え物のパーツが並べられ、お供え物の準備が進められていました。

　写真は、ロラスの儀式が行なわれる場所。タボラ地区の墓地の入り口に、ペタと呼ばれる数棟の建物がこの儀式用に建てられています。柱にはピナンの木が使われ、アランアランで屋根が葺かれています。儀式が終わった後は、全ての建物を解体して、燃やしてしまいます。