今日は、プラ・プサ・タボラのオダラン（Odalan　寺院祭）の日。朝9時から、と聞いていたのですが、朝は、神様がお清めに出かけて、一斉礼拝が出来るのは、結局お昼過ぎ、という知らせが入ってきました。町内放送や電話連絡網などは、無いのですが、こういった知らせは、人から人へ、ご近所からご近所へ、と、ちゃんと伝わっていくのです。なんだ、それほど急がなくても良かったのね、ということで、私達も準備を終わらせた後、家でしばらく待機します。

　お寺と自宅が近い場合など、朝のうちに、お供えものをお寺に運び、一旦家に戻った後、午後改めて礼拝に訪れる、という方法もあるのですが、今日は、お供えものを持って、そのまま礼拝をします。さて、時刻はもう午後1時、お寺へ出発しましょう。写真は、主人の母と、彼女のお供えもの。バリ島の主婦にとって、祭事ごとに、お供えものの材料を十分に準備し、美しくお供えものを作り、健康で美しい装いで礼拝に参加できることは、たいへんな誇りなのです。ですから、お寺へ向かう女性たちは、堂々として、大変美しく見えます。

　お寺に着くと、とりあえず、用意された場所に供物をお供えします。ずらりと並んだ供物を、覗き込みながら、「あら、この果物は何かしら」とか、「このお菓子は、どこで買ったの？」などど、お話をする奥様方も。

　礼拝まで、まだ時間はたっぷりあります。すでに、礼拝のための場所に座って、待っている人。お寺の中をうろうろする人。それぞれ、時間を過ごしますが、境内ではトペン（仮面）の踊りが始まりました。
　今回のトペンの踊り手は、クルンクンのサトリアという場所や、その他の地区からの混成チームで、いつにない盛り上がりを見せていました。トペンの踊りの後、プダンダ（高位僧）と弟子を題材にした歌劇も始まり、アドリブの台詞の中には、ようやく登場した老いたプダンダに、弟子が「朝の9時といわれたので、私は朝からお寺に参りましたが、プダンダは、今ようやくお越しですか～？」というものがあって、皆、笑い転げていました。踊り手が、子供たちに一緒に踊るように、誘っています。

　そのうちにクルクル（Kul Kul)が鳴らされます。高い塔に吊るされたクルクルと、この、かなり年季の入ったクルクルが交互に叩かれます。礼拝が始まりますので、はやくお寺に集まるように、と知らせています。

　クルクルの音を合図に、皆、お寺のプリアン（Purian　奥境内）に集まります。意外と観光客の多いシドゥメン村、今日も外国人の方の姿が見えました。

　プリアンでは、ガンバンの演奏が始まります。竹の鍵盤を、二股に分かれたバチで叩きます。

　ガンバンの演奏にあわせて、ルジャン（Rejang)が奉納されます。ルジャンは、神様のために踊られる神聖な踊り。初潮を迎える前の、女の子たちが列になり、プリアンを3回まわります。シドゥメン村のプラ・プセのルジャンは、ガンバンの音色にあわせて、ごくシンプルに、手を右に上げたり、左に上げたりする動作が加わります。

　ルジャンが奉納されたのちも儀式は進んで、いよいよ礼拝が始まります。

　プダンダのウェーダと、プマンクーの合図に沿ってお祈りを行い、聖水とビジョー（Bija)を頂いて、礼拝は終了。供物を持って、家に戻ります。

　または、お寺のワンティラン（Wantilan　大集会場）に準備されたサテやラワールをムギブン(Megibung　皆で一緒に食べること)で頂いてから帰ります。

　来月の満月、11月2日は、田んぼのお寺、プラ・ジュンプンガンのオダランがあり、12月8日はプラ・ダラムのオダランと続きます。今月はガルンガン、クニンガンもありますが、その後もしばらく、シドゥメン村はお祭りが続きます。
　　いつも上手に家計をやりくりして、供物を美しく準備するバリ島の女性たちの、腕の見せ所ですね。