夕べは雷雨になったため、今日は幾分過ごしやすくなりました。カラカラに乾いていた地面も、適当に湿ったようで、空気の埃っぽさが減りました。

　天気とは、関係ないと思うのですが、夕方になって、ふと、ルジャック(Rujak)が食べたくなりました。
　ルジャックというのは、簡単にいうと辛いフルーツサラダ、ということになるでしょうか。薄くスライスした果物を、唐辛子、トラシ（えびの発酵ペースト）、塩、椰子砂糖、アサム（干しタマリンド）、チュカ(Cuka 酢)などを混ぜた調味料で、味付けしていただきます。
　シンプルなルジャックは、他のバリ島の田舎料理と同じように、ウヤ(Uyah　塩)、セラ(Sere　トラシ)、タビヨ(Tabiya　唐辛子)だけで味付けされ、酸味の強い未熟なパパイヤや、水分の多いジャンブーという果物とよく合います。先ほどの調味料に、アイル・ピンダン（塩漬け魚の煮汁）を加えた、辛くて塩気の強い、強烈な味のルジャックもあり、バリ島独特の味なのだそうです。
　また、ジャワ風の、椰子砂糖とアサムを多く使い、とろみを出して作ったルジャックの調味料は、熟したパパイヤやマンゴー、パイナップルなどの甘い果物とよく合うようで、若い女性や子供たちにも人気があります。
　
　シドゥメン村をはじめ、バリ島のどこの地区でもルジャックを売るワルンは、簡単に見つかると思いますが、こちらのワルンには、ちょっとした味の秘密があるそうです。

　写真は、シドゥメン村の市場前の通り、暑い日の午後は、人もあまり歩いていません。天気が良いと、左の奥のほうに、アグン山が大きく見えます。お目当てのワルンは、右側の緑色の布が張ってある、小さなワルンです。

　こちらワルンの店主、イブ・デワ・アユ・アノムの作るルジャックは、まろやかな酸味を加えるために、トゥアック（Tuak　椰子の発酵酒）から作ったチュカ（お酢）を隠し味に使っているのです。
　他のワルンでは、合成甘味料や合成酢を使っているところもあるようですが、こちらのワルンは、全て天然素材を使っていて、辛さの中にも、後を引く美味しさがあり、わざわざ遠くからルジャックを買いに来る人も多いそうです。

　一番人気は、辛くて酸っぱい「ルジャック・チュカ」ですが、これは太陽の照り付ける暑い日によくあいます。今日は、やや涼しいので、甘口でいきましょう。順番を待って、私も甘めのルジャックを注文します。家に持って帰って食べられるように、ブンクス（Bungkus　包む）に、してもらいます。

　季節によって、その日の仕入れの状況によって、ルジャックの中身は変わります。今日は、パイナップルや熟したマンゴーも入っていて、甘めです。が、念のために、冷たい飲み物や甘い食べ物も準備しておきましょう。

　初めて食べたときには、辛さと独特の風味で、とても全部食べきれない、と思ったルジャックでしたが、いつの間にか好きな食べ物になってしまいました。生理になる前や、妊娠初期に食べたくなる、という女性も多いようです。ルジャックには、よくパイナップルが使われていますが、パイナップルは妊娠中、特に妊娠初期の女性は食べてはいけないそうなので、心当たりのある人は気をつけなくてはなりません。
　また、これから初めてルジャックに挑戦される、という方は、衛生面に気をつけて頂くほか、強烈な調味料でお腹をこわさないように、食べる量にも御注意ください。